感想コロナ禍で出張に行くことがなくなり少し時間ができたので、今年は久しぶりにテクノラリーに向けてエンジンを設計しました。お湯を熱 源にするスターリングエンジンで、これまで以上に仕事を取り出せることを示せたことは良かったと思っています。 RCクラスの走路はどのくらい凸凹なのか事前には分からないので走るかどうか心配だったのですが、ほぼ狙い通りのタイムで走らせることができました。 熱源がガスバーナーなどのときとは異なり、お湯を熱源とする場合には設計にも新しい考え方が取り入れられました。今回のエンジンの部品はほとんどが樹脂製 で、3Dプリンタで作っています。切削加工で作る場合とは可能性も制約も変わりますので、いろいろなチャレンジができました。 Goraに採用したアクリル製再生器は、加熱温度の低いスターリングエンジンにとって新しい選択肢になると思います。ステンレスメッシュやスチールウール など従来から使われている再生器との性能比較をしてみたいと思っていますが、少なくとも狙った性能を再現性高く出せるという点では、このタイプの再生器は 優れていると考えられます。 Goraに採用したアクリル製再生器。小さな六角穴が多数あいている。 お湯タンクやロス機構のベアリング保持部なども、切削加工では作りにくい形状を3Dプリンタで作ることで容易に実現できました。3Dプリンタの性能向上は 目覚ましく、かなりの精度と強度を持つ部品が作れるようになっています。機械設計を学ぶにあたって、知っておくべき加工方法の一つになったと思います。 今回は初めてγ型のエンジンを作ったのですが、性能シミュレーションの重要性を改めて感じました。これまでの経験と勘で、こんな感じかと形状を決めて作っ たエンジン(Yumoto)は、無負荷ではよく回るものの、ラジコンにして走らせるとかなり遅いものでした。エンジンのサイズを大きくしようかとも思った のですが、その前に同じ大きさのエンジンでどこまで性能が上げられるか見ておこうと、これまで使っていたα型エンジン用のシミュレーションをγ型エンジン 用に修正し、性能予測をしてみました。すると、同じ大きさでもまだまだ出力を上げられる余地のあることが分かりました。計算上は10倍に出力が高まったの で すが、その通りかどうかはともかく、シミュレーションによる各部寸法の最適化で走行速度が飛躍的に上がったのは事実です。 最初に作ったエンジン「Yumoto」。お湯だけで1200rpmで回
るが、出力はとても小さかった。
地球環境への関心が高まる中、お湯から仕事を取り出せるエンジンを設計するというのは、工学教材として最適です。スターリングエンジンは相変化を伴わない 熱機関のため爆発の危険性 が少なく、機械設計を学ぶには最適な教材ですが、お湯を熱源にすることで危険性は更に小さくなるので、より自由なアイディアを試すことができます。エンジ ニアを目指す人たちが設計を学ぶためのヒントをこれからも提供できればと思います。 2021年11月24日 |
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